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大和本草
十二雑木
槲(くぬぎ/なら) 四種あり、一種は大なら(○○○)也、くぬぎと雲、葉栗の如し、秋冬葉枯て不落、四五月花開く、栗の花に似たり、実は椎の如く大也、其苞半おつヽむ、実お粉にし餅として食ふ、飢お助く、木は頗高し、屋材とし炭とす、〓州池田炭は一倉と雲里にて、此木にてやく、池田にて売る、其皮粗し、国俗此皮お乾し、忍冬と等分に合せて煎服す、腫物お治す、又煎じて布お染む、茶褐色なり、一種小なら(○○○)と雲、小木なり、材木とすべからず、実なる苞ありて半おつヽむ、実はまてばしいに似たり、どんぐりと雲、又実に非ずして別に毬の如なる物なる、其大如梅実、西土の俗ならかうと雲、これお煎じて黒色の下地お染る、此木お薪とす、葉はくぬぎに似たり、小葉なり、本草に見えたり、順和名抄に挙樹おくぬきと訓ず、又曰、日本紀私記雲、歴木、今案此二説出処未詳、ならかしは(○○○○○)是亦ならの木の一種なり、葉はくぬきに似て大なり、末広し、周の端に大なる刻欠ありて岐多し、木理も皮もくぬぎに似て粗く堅し、高さ一丈余材木とならず、冬は葉落つ、三月花開て栗の花の如し、秋実お結ぶ短し、其帯は苞にあらず、実の味不美、凶飢には可食、参州山中と雲処の猿が馬場と雲小里に、かしはもちとて、此木の葉にもちお包みうる、此木は柏にあらず、柏は別木なり、此木と同名異物なり、又一種栗かしは(○○○○)栗の葉に似て厚大なり、実は小ならの実に似たり、