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万葉集略解
十六
もむにれ字鏡、樅〈毛牟乃木〉和名抄、及字鏡楡〈夜仁礼〉と有、是おにれとのみもいへり、樅に似たる楡(にれ)おいふべし、内膳式楡皮一千枚〈枚別長一尺五寸、広四寸、〉搗得粉二石、〈枚別二合〉右楡皮年中雑御菜并羹等料雲々など見ゆるおおもへば、いにしへ此木の皮お剥て日にほして、臼につき粉にして食しものとし、供御にも用ひられしと見えたり、日の異(け)にほしの異は借字にて、日の気也、さひつるや枕ことば、からうすに舂は、いにしへ右楡に蟹お搗交て醢にせし也、