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重修本草綱目啓蒙
二十四喬木
榔楡 あきにれ(○○○○) いたちはぜこ(○○○○○○)〈大和〉 いぬけやき(○○○○○)〈阿州、同名あり、〉 子れのき(○○○○)〈同上〉 かはらけやき(○○○○○○)〈丹波〉 一名華〈通雅〉 郎楡 策楡〈共に同上〉 野楡〈女南甫史〉 水辺に多く生ず、大木なり、葉の形楕にして尖り、辺に鋸歯あり互生す、葉に沙ある者お刺楡と雲、沙なき者お綿楡と雲、皆榔楡なり、八月葉間ごとに花お開く、黄白色なり、後莢お結ぶ、楡銭の形に異ならず、熟すれば早く落ち散ず、冬に至れば葉みな凋落す、 増、一種蝦夷の産にあつ(○○)と雲ものあり、誤てあつし(○○○)とも呼ぶ、春月新葉お生ず、形榛(はしばみ)の葉に似て長さ三四寸、本は狭くして一寸許、末は広く二寸余、葉頭に岐ありて矢筈の如く互生す、この木大木となる、蝦夷人この皮お剥て紡績して布とす、これおあつしと呼ぶ、夷人の常服なり、又蝦夷にては此木お以て小き盤お作り、中お凹して同木の棒お以て摩て火お取る、その盤おしよつぽと雲、棒おかつちと雲、已に燧火の条に弁ず、又一種花戸にて鐡刀木と呼者あり、春新葉お生ず、加条(むく)の葉に似て、鋸歯粗く皺文ありて互生す、これに一種枝幹共に巨羽お生ずる者あり、共ににれの類なり、