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今昔物語
十四
備前国盲人知前世持法花語第十九 今昔、備前の国に有ける人、年し十二歳にして二の目盲す、父母此れお歎き悲むで、仏神に祈請すと雲へども其の験無し、薬お以て療治すと雲へども不協ず、然れば比叡の山の根本中堂に将参て、盲人お籠めて心お至て此の事お祈請す、二七日お過て盲人の夢に、気高き気色の人来て告て雲く、女ぢ宿因に依て此の盲目の身お得たり、此の生には眼お不可得ず、女ぢ前生に毒蛇の身お受て、信濃の国の案田寺の戌亥の角の榎の木(○○○)の中に有りき、〈◯下略〉