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広益国産考

楮(かうぞ)〈かご(○○)又かぞ(○○)ともいへり〉 楮は畑の堺山畑抔の片下りの所へ作りて、土留となるものにて、年々植かゆるものにあらず、其伐株より芽お生じ、秋に至りて成長し、麦蒔比は藁もてくヽりあげて蒔事なれば、格別作りものじやまにならずして益に成もの也、西国辺の山添の村にて、田畑五十石高も持たる百姓にては、楮の皮の乾あげたるお、百把位は収納するなり、〈一把五〆目〉壱把の価拾五匁と見ても、銀壱貫五百目也、平地の村にても畑の四面に植て、利お得るもの也、此楮に種類多くありて勝劣あり、苗の勝れたるお撰び植べし、 楮之種類〈此種類九州にて植る所の名也、国所によりてかはるべし、〉 一おぶち〈上〉 〈木肌赤黒く皮厚し、脂気多く和らかなり、葉の切目黒ひおより深く、木長く伸、わきへたれ、製して極白し、又正味多し、此木は暖なる地に植べし、〉 一丸葉(○○)〈中〉 〈木肌紫黒く皮うすし、脂気少くして和らか也、葉丸きによりて丸葉といへり、正味少し、併製しては上紙に宜し、正みすくなきによりて、おぶちよりおとりたりといへども、紙に漉てよろし、〉 一白梶(○○) 〈木肌白し、脂気なく丸片葉ありて、丸葉目高の間なり、製するにはこはし、〉 一目高(めたか)〈下〉 〈丸葉のつぎなり、立伸たる小芽高き故、目高と雲、皮うすく葉の切目浅く、片葉は切目あり、片葉は丸葉なり、紙に製してかたし、正味よし、〉 一黒(くろ)へお〈下〉 〈木肌白く、皮うす紫に見へ厚く脂気うすく、皮こはし、製して白し、又和らかなり、紙に漉て少しすき悪し、へおの名は鷹のへおより出たる名なるべし、〉 一白(しろ)へお〈下〉 〈木肌は白く、脂気薄し、葉は目高に同じ、〉 一青へお 一なまづお 山楮(やまかうぞ)と唱、下品なる紙に交漉種類、 一白くち(○○○) 一やまず(○○○) 〈是は山に立楮にて、年久しきものは壱尺廻り位なる木あり、葉は丸し、山楮といふ、〉 一むくび(○○○) 〈是も山に生立楮にて、葉丸く蔦(かつら)なり、〉 一桑の皮是より〓州木部にて仕立、九州中国四国辺〈江〉送る所の種類、一赤楮(あかかうぞ) 〈木肌赤く、木立細く、葉もほそく、切こみなく、皮もうすし、〉 一黒楮(○○) 〈大体おぶちに似て、葉の切こみ深く長く伸、正味多し、平地に植てよろし、〉 一真楮(○○) 〈石州にては専ら用ふるよし、一名つヾらかけといへり、〉 一高(たか)楮 〈たかそといへり、〉 〈紙性少しあしけれども、木至て長く伸るなり、たねおとりて蒔木なれば、分根して苗おこしらふるにおよばず、〉 此外にも種類あり 余の国々にて下紙に漉交る品あるべし、筑後にては藁お細かにきざみ打て、楮に交て漉たるお豊年紙とかいへり、又江戸にて艾お交て漉たるお見、筑前にて竹の子の伸て、頓て葉生ぜんとするころお細かにたヽきて、楮お少し入漉たるお見し事あり、如此楮に交て漉ぬれば、木の皮抔に下紙に漉交る品あるべし、