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駿国雑志
二十六
楮 富士郡上井出村にあり、当村及所々是お植て紙お製せり、凡此木、かち苧、高苧等の種類あり、〓に植る所は真楮苧(まかぞ)也、又三股お以て製るにも、真楮苧お入ざれば、すく事あたはず、毎年十月より三月下旬まで漉べし、〈楮、三股共、伐て蒸貯る也、〉夏紙は漉かず、〈希に漉事あり〉是お製るに初祝後(はついわひしまい)祝等さま〴〵の祝事あり、すべて此紙お漉には、根だも〈野黄蜀葵(のとろヽくさ)お雲、多く畑に作て用る也、〉蔓だも〈山黄蜀葵お雲、自然に生るお用る也、〉こがだも〈こがの木の葉お雲也〉の三汁お加へて漉べし、又真楮苧お加ふるの多少に依て紙の強柔あり、凡紙は板にはる方お表とす、当国所々是お製すといへども、十文字端きらず等の厚紙お製するは、安部郡藁科の奥のみ、或雲寒所は生紙お出し、暖地は生紙お製する事難し、是上地の水に依れる処也雲々、