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重修本草綱目啓蒙
二十二夷果
無花果 いちじく(○○○○) とうがき(○○○○)〈筑前〉 うどんげ〈加州〉 一名映日紅〈典籍便覧〉 仙桃〈三才図会〉 青桃〈同上〉 密果〈群芳譜〉 元来漢種なれども挿て活し易き者故、今市中に多し、高さ丈許、葉は構の花に似て厚く、椏少してざらつきあり、此お断てば白汁出づ、春生じ、夏盛にして冬落つ、五月葉間に実お生ず、形正円にして木饅頭(いたび)に似たり、大さ一寸許、初緑色熟して紫色、珠至て甘し、内に白色の細子あり、大さ罌栗米の如し、青実お採り粃塩に蔵食す、俗に五痔お療すと雲、又一種熟するに至て紫ならず、仍青き者あり、芸州にてしろいちじくと雲、無花果は花なくして、実お結ぶ故に名く、然れども春月細小白花お開く、形分明ならざる故無花果と雲、又古へいちじくと雲ふは、天仙果のことなりと、大和本草に見へたり、