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草木性譜

榕樹( /あこう) 南土の産にして寒お畏る、冬暖室に蔵むべし、其葉深緑光沢あり、冬凋落す、夏枝頭より新葉お生じ、即其枝長ず、夏中希に花あらずして、枝条に数果お発すること忽然たり、其色初青緑白点あり、深秋に至て熟すれば、紅紫色黄点、果中紫色にして、空虚肉なく全く無花果の如し、枝お折ば白汁出づ、〓挿して能活す、偶根上より根お生ず、然れども其土にあらざれば、多く生ずることお得ず、隻一二根而已、又がつまる〈漢名は未詳〉即其一種にして、南国の産、頗る寒お畏る、其性榕樹に相似たり、夏花あらずして枝条に果お生ずること忽然たり、形榕樹の果の如し、〓挿して能活す、根上及び枝間より根お生ず、榕の根より生じ易きといへども、其土にあらざれば長じがたし、