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剪花翁伝
前編三五月開花
南燭(なんてん) 花白也花茎小枝ありて、小英群攅て一房おなせり、開花五月、方半陰(かげ)、地三分湿、土回塵(まひごみ)、肥えらばず、分株、移ともいつにてもよし〓(さしき)春ひがんにすべし、接同節寄接也、実は十月に熟す、赤あり、白あり、また一種筏葉といふあり、葉の茎三本づヽ、並びて、筏に似たり、又葉の柊(ひらぎ)のごとくなるものあり、いづれも挿花に用ふる也、此幹お撓めむすぶ、方紙お枝に巻て水お浸し火にかけて焼ば、自由に曲るといふ、伝は大概同じけれど、其伝のごとくしてならざることあり、是は理のみお知て、其わざに拙きゆえなり、此紙お巻お雑巾に換て巻べし、又水に浸すお、沸湯お澆ぎて火に炙るべし、さて火気通るまで炙て、一時には曲りがたしいまた和らがざる所はよく炙て徐々に撓る也、急速にすれば弾ける也、さて曲結て冷水に入るれば反ることなし、是焼刃お入るにひとし、幹は二年物三年物よし、是伝也、