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草木性譜

木蘭(もくらん/もくれん) 〈附〉玉蘭( /はくもくれん)処々に植、春時枝頭毎に背濃紫色面白色の一花、新葉と倶に開く、状蓮華の如し、蕊あり香気お発す、七弁八弁あり、実お結ばず、凡万花陽に随て開く、然るに此花悉く陰に随ふ、蓋し陰木なるべし、秋時蓓蕾お生ず、悉く陰に随ふ、状筆頭の如し、秋後其葉墜、又玉蘭は花お先にし葉お後にす、木蘭より早く開花し、八弁或は九弁、面背純白色、状木蘭の如し、蕊あり亦香気お発す、実お結ぶ、其色紅紫鱗甲あり、頂に濃紫色の皮有て、両裂すれば中に子あり、朱色なり、其全形虫の朱丸お咥(くはへ)たるが如し、甚熟しがたく、夏中に落る者多し、其花亦悉く陰に随ふ、秋時枝頭毎に蓓蕾お生じ、即陰に随ふ、秋後其葉墜、又一種弁下紫色にして、木蘭と倶に開花する者あり、是皆接換して能活す、其性全く木蘭に似たりといへども、旧説辛夷( /こぶし)の一種とす、然れども玉蘭の花陰に向は、木蘭の性なり、辛第の花は陰に向はず、玉蘭お以て辛第の一種とするは穏ならず、本草綱目辛第集解雲、時珍曰、有白色者、人呼為玉蘭と而已ありて、其形状お釈せず、甚疏漏なり、此説は辛夷中の白花なる者にして、今雲ふ玉蘭に非ず、疑らくは同名異品ならむ、玉蘭は木蘭の一種なり、物理小識雲、玉蘭即木蘭、大理府志木蓮花樹高大花如蓮、有青黄紅白四種、白香山言忠州有木蓮花、王元美謂即玉蘭、智按るに、玉蘭春初開、木蓮四月花、蓋亦有別と、辛夷は花お先にし葉お後にす、玉蘭は辛夷の如し、故に辛夷の一種とす、然れども桜に花お先にし、葉お後にするあり、是お以てこれお推ときは、則花葉の先後お以て一概に別種とするは非なるに似たり、尚後の君子の明弁お俟つのみ、