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重修本草綱目啓蒙
二十三香木
樟脳 通名 一名朝脳〈本草原始〉 潮脳〈薬性要略大全〉 樟氷〈医宗雅言〉 獐氷〈外科正宗、獐は樟の誤なるべし、〉 樟樹の脂膏お煎じとる者なり、其法は集解の説と異なり、先づ地お掘て長竈お築き、数鍋お並べ架し、各水お入、上に木甑お置き、樟の生木お伐り、枝と皮とお去り割て小薄片と為し、甑中に入れ、木薪お焼て蒸過し、上に沙盆お蓋ひ火候足り沙盆冷るに至りて、盆内に樟脳の結するお払ひ取る、皆くすの木の心赤黒色にして脂あるものお用ゆ、心白くして脂なきものは蒸して脳なし、増、峒山小原先生の話に、こヽに樟の生木お伐り、枝と皮お去て樟脳お取ると雖ども、根お用ゆるお最上とす、これお取るには、鍋十一宛お二行に並べ、一人にて同時に火お焚くべしと雲へり、樟脳は細末と為し難きものなり、樟脳お紙上に薄く盛り、上より紙おあてヽ、其上より鈷鉧(ひのし)おかくれば即細末となる、且つ臭気脱して、極て上好の品となる、然れども甚だ耗るなり、