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本草弁疑
四木
竜脳(りうのう) 今所渡の者二種あり、梅花と雲は白く透明して雲母片に似たり、上品なり、みどりと雲は、胡麻塩お見に似て、黒者交り色うるみて細なり、下なり、香具に用べし、服薬には不可用、又一種樟脳お交へたる者あり、ぬれたるやうにして、色うるみ白し、真はから〳〵と乾て白し、又かどなくして円き者あり、是樟脳なり、能々可択、 方書に片脳(へんのう)とあるお樟脳と心得る人あり、大に誤りなり、竜脳の中に梅花片氷片とて、極品の竜脳あり、それお略して片脳とも書す、庸医不知之して別に片脳と雲者ありと心得て、薬家に求之、薬家又不知して樟脳の焼返お仮り名て片脳となして売之、其の価賤が故に又不改之して用る人多し、愚の甚哉、