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重修本草綱目啓蒙
二十三香木
烏薬 通名 一名比目沈香〈輟耕録〉 矮脚樟〈物理小識〉 子一名雪裏紅〈物理小識〉 傍毘子〈説略〉 漢渡二品あり、棒様とくヽり様となり、くヽり様と呼ぶ者は、根形天門冬の如く大にして、両頭尖り中間豊なり、是集解に、形如連珠と雲者なり、新根にして薬用に上品とす、又木根の形の如くにして、連珠おなさヾる者あり、是お棒様と呼ぶ、旧根にして薬用に良ならず、唐山にて天台烏薬お名産とす、略して台烏と雲、他所の産は土烏薬と雲、享保年中漢種二品渡る、天台烏薬と衡州烏薬となり、伝へ栽て今花戸に多し、天台の烏薬は木の高さ八九尺、多く叢生す、一二尺の小木も能く花お生ず、葉は円にして尖り大さ一寸余、三縦道ありて桂葉の如し、互生す、三月葉間に花お開く、淡黄色、大さ二分許、後円子お結ぷ、秋に至り熟して赤色、大さ南天燭(なんてんの)子の如し、後に漸く黒色に変ず、地に下して生じ易し、油お搾り灯に用ゆべし、臭気あり、此根和州の宇多城州の八幡に多く栽て四方に貨す、新鮮にして佳なり、衡州の烏薬は形状同して、叢生せずして高く聳ゆ、其根堅〓にして香気少し、下品なり、近来肥後より和産お出す、薩州にていそやまだけ(○○○○○○)と雲、琉球にてはまばしがらき(○○○○○○○)と雲、葉の形細長三寸許、三縦道ありて甚だ桂葉に似たり、深緑色、春葉間に小花お開く天台の烏薬に似たり、古説にはうこんばなお似て天台烏薬とす、然れども漢種に異なり、うこんばなは、一名はたうこん、ともぎ、つらふり、〈播州〉しろもじ、〈加州〉のそば、〈予州〉くろぢしや、〈信州〉山中に自生多し、冬は葉なし、春初先花お開く、山茱萸の花に似て色浅し、葉は大さ三寸許円にして三尖あり、蔵器の説に高さ丈余、一葉三椏と雲時は、是も亦烏薬の一種なり、天台の烏薬に非ず、根の形も連珠おなさず、又円葉の者あり、