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草木性譜

蚊母樹( /ひよんのき) 〈附〉蚊子木( /まるはのきひよん) 山中の産なり、庭除に植れば、火災の時風お発し火お防ぐ、其葉四時青翠、夏新葉お生じ、葉中に癭の如き者発し、中より小虫羽化して散出す、又花あらずして枝条に実の如き者お生ず、即古度(ひよん)子〈本草綱目無花果附録〉初緑色、後褐色其中空虚、其殻薄して甚だ堅〓、亦虫お生じ、羽化して散出す、いんのこと雲ふ、是虫窠なり、又偶夏葉間に朶お発し、紅色の花簇生す、花後実お結ぶ甚だ堅〓、褐色の粉お〓く、頂に両刺あり、秋後両裂すれば二子あり、麦粒の如し、至て堅〓、是其雌一種花実なき者あり、是其雄なり、又一種其葉稍円く木の形状尋常の者に異ならずして、枝条に全く円実の如き者生ず、其色初浅緑、後褐色、其中空虚、亦虫お生ず、即虫窠なり、綱目蜚蝱附録に、嶺南有蚊子木と雲ふ者なり、