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草木六部耕種法
十一需花
桜と梅とは種類の極めて多き者なり、共に百余種づヽ有り、〈◯中略〉且つ桜品中に於て、古来より其名高き者は、彼岸桜(ひがんざくら)、寒緋桜(かんひさくら)、香桜(にほひざくら)、月白桜(あさぎざくら)、樺桜(かばざくら)、下垂桜(しだりざくら)、紅糸桜(あかきいとざくら)、上瑞桜(うはみづざくら)、八重桜(やへざくら)、熊谷桜(くまがへざくら)、流黄桜(うすきざくら)、常盤桜(ふだんざくら)、犬桜(いぬざくら)等なり、彼岸桜は花単にして小く、下垂なるお糸桜(いとざくら)と雲ふ、寒緋桜(かんひさくら)も花は単にて紅き色なり、此二種は花開こと最早し、八重は花開くこと遅し、熊谷桜は八重なれども花早し、八重桜の花の最も遅く開お泰山府君と名く、犬桜も二種あり、其一は単なる山桜なり、其二は彼岸桜の如くにして、其花の種お抽ること上瑞桜(うはみづざくら)に似たり、花弁の細なること毛の如き者なり、