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重修本草綱目啓蒙
二十一山果
山桜桃 やまざくら 一名棣子〈急就篇〉山に自生ある故、やまざくらと呼ぶ、市中に種て花お賞す、諸桜より早く開く、単葉にして落易し、数少きおやまざくらと雲、花多く簇り開およしのざくらと雲、花小なるおちござくらと雲、共に花後実お結ぶ、形正円三分許長茎下垂す、初め緑色熟して赤色、或は黒色、児童さくらぼんと呼ぶ、木皮和方に多く用ゆ、薬舗にさくらの皮と雲、樺皮とは別なり、凡そ樺桜の類、皮の条理横にして、他木皮の条理竪なるに異なり、山桜桃お大和本草に、にはざくらと訓ずるは非なり、にはざくらは多葉郁李、又千葉郁李と雲、又本経逢原に、桜桃一種小者名山桜桃と雲は非なり、集解にも数説あり、時珍の説に、葉長尖不団と雲お以て、やまざくらとすべし、唐山にては桜お桜桃に混ずること多し、名花譜に説く所の桜桃の形状は、全く桜のことなり、この外考証多し、桜は明の宋景濂の詩あり、