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大和本草
十二花木
垂糸海棠(いとざくら) 樹与彼岸桜同、枝長く糸の如くにして下り垂る、花美はし、彼岸桜より花やヽ遅し、いとざくら唐よりも来る、唐人これお垂糸海棠と雲、合璧事類海棠花説曰、一種柔枝長〓者、顔色浅紅、垂英向下謂之垂糸海棠、与海棠大不類、蓋強名爾、これいとざくら也、本草時珍が説、海紅集解に出たり、事言要言に沈立海棠記お引けるも与此同、海棠に非れども、花似たる故に垂糸海棠と名づく、樹の形状も花の容も彼岸桜と同、いとざくらお桜につげばさかへず、彼岸桜につげば栄ふ、同気の故也、王世懋が花疏には、垂糸以桜桃木接ぐといへり、ゆすらの木につぐべしとなり、彼岸桜と垂糸海棠の別は、しだり柳と常の柳の如し、うば桜といとざくらは一時に開く、