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古今要覧稿
草木
薩摩緋桜(○○○○) 怡顔斎桜品雲、薩摩に緋桜といふものあり、名はおなじく、花形大に異なり、薩州鹿児島より琉球へゆくみちに、みちのしまといふ所にあり、はなは正月上元に最盛なり、冬より芽生ず、花重弁、紅梅に似てはなはだ紅し、葉も樹の皮もまつたく桜に異なることなし、此種東山泉涌寺悲田院にあり、然れども花いまだ占す、是暖国の木、京地のさむき地へうつしたる故、木長ぜざるものなり、京師の緋植とは別種なり、予悲田院に過て目擊、