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大和本草
十二花木
桜〈◯中略〉 吉野(○○)の桜は古来今に至て多し、山谷に満り、麓より咲初て、奥の院の峯に至り、中道と左右の谷やうやく咲つヾく、其間一月あり、盛なる時目お驚かす、東西の谷々、数里の間桜多し、他処の花よりうるはし、如此美観恐くは華夏蛮貉共にあるべからず、其花立春より六十五日お盛とす、寒温によりて少遅速あり、皆単花なり、八重はなし、八重桜は奈良よりおこれり、