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橿園随筆

梅の仮字 梅の仮字、万葉集にてはまさしくうめなれど、古今集貫之主の自筆の本といふに、むめとあれば、古今集已後の仮字には、むと書方よろしとて用る人あり、おのれいまだ其自筆の本といふものは見ざれども、古今集物名に、梅あなうめにつねなるべくも見えぬかなこひしかるべき香はにほひつヽとあり、これはあな憂といひかけたれば、貫之主もうの方お用られたりと見ゆ、これも高鞆説也、