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玉勝間
十四
紅梅の仮字 紅梅の仮字、字音おしるす時には、こうばいと書べけれど、つねにはこおばいと書べし、拾遺集物名の歌に、これお子おばいかでか生むとすらむとよめるお、此時かりに宇(う)お乎(お)に通はしてよめるものと心得るはたがへり、こはもとより、常にもこおばいといひもし書もせし也、古今集物名に、芭蕉お心ばせおばとよめると同じ例也、又和名抄に、襖子阿乎之(あおし)と見え、他の書にもあおといへる、此たぐひみな宇(う)の韻お乎(お)となほして、やがて訓にしたるにて、灯心の美(み)、銭(ぜに)、蘭(らに)などの爾の類なり、