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草木六部耕種法
十九需実
梅は花お賞玩すること極て篤し、其事需花編に既に詳せり、実お需て此物お作には、接木するお良とす、〓栽お成長せしめたるは、実結ことの遅のみならず、其実肉の肥大ならざること多し、宜く先其〓お栽て苗お為立て、苗一尺以上に及びたるお、植地に移し植え、培養して早く成長せしめ、其幹笛竹(ふえたけ)の太に至り、乃ち伐て砧木と為し、極良なる梅お撰び、其の梢お接木すべし、其法は下の接木編の条下に詳なり、実お需て接木するには其実大にして肉肥たるお撰ぶに利あり、紅梅、臘梅、碧梅等は実小し、宜しく白梅、青梢(あおじく)、豊後(ぶんご)等、其実大に肉肥たる木の枝お接べし、然れども歳暮より早春の間に花お売の利、亦少からざる事なれば、此等の勘弁も有べし、故に野梅と雖ども、花美く実味苦からざる者は、植て人世の用お利すべし、又信濃梅あり、其実小して竜葵子(ほうつき)の如く、塩梅に製すれば〓歯に脆く、噬砕て賞味すべし、且又梅は地嫌すること少く、真土擬土共に栽べく、山中海辺の土地と雖ども、培養お懇にするときは、皆能く繁栄す、然れども寒糞お用ひざるときは、花発売結と雖ども皆徒に早く落ちて、用ふべきの時までは留著ざる者なり、故に寒中には其根お去ること一尺余お隔て、地に穴お掘り、人糞或活物肉、干鰯汁等の肥養お饒に用て、上に土お覆ひ置くべし、