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地錦抄

桃のるひ〈木春中〉 西王母 もヽいろ、八重大りん、木一尺ほどになれば、花さく事おびたヾし、花は一所に二つづヽなる物なり、花落るまで葉出ずして、落花後葉出、六七月時分、葉のさきに又花さく事あり、 一歳桃(いつさいもヽ) 花形せいわうぼ似て、たねお植て其年の実生に、花咲ゆへ、一才もヽといふとぞ、 あめんだう 葉ほそく長く、やなぎのごとく、今は中絶してなし、 帚桃 春末花白と、もヽいろさきわけにて、なかほどにりん、八重なり、木立(こだち)本よりほそく、多く出て、草帚のごとし、花よくあつまりさく、見事、又もヽいろの八重もあり、是はさきわけよりわるし、 火桃 なるほどくれない、八重又緋桃とも書、 大坂桃 是お今世間にてあめんだうといふ、葉ほそ長く、木しかみて花もヽいろ大りん、 源平桃 白赤さきわけ、八重ひとへあり、 白桃 白八重ひとへあり 紅桃(こうとう) 火桃より色うすし、八重ひとへ有、 しだれ桃 もヽいろ八重一重有、大りん、木やなぎのごとくしだるヽ、 ずばい 火桃の一重なり、色よし、 さきわけ 源平桃の事か 紅しだれ しだれもヽの色少あかき物なり 長せいもヽ くわしくしらず よろいたうし 花もヽいろ、ひとへくりん、桃すぐれて大きし、 李(すもヽ) 花形白小りん、八重ひとへあり、 にがもヽ もヽいろひとへ、八重白きも有、いつまでもにがし、 さもヽ からもヽのごとし 楊桃 もヽのるいにはあらず、実むらさきいろ、 からもヽ 白小りんもヽちいさし、 夏もヽ もヽいろひとへ大りん、花は春咲、もヽの色づく事はやし、