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大和本草
十果木
杏(からもヽ/あんず) 其花紅梅におくれ、桃に先だつ、花うるはしく、子は果として食し、其内の仁は薬とし、又食品に加ふ、香味良、世俗に杏子唐音およんであんづと雲、仁にあんにんと雲、和名からもヽ、杏子おほして果とするもよし、一種花紅にして八重なるあり、花大なり、単花に後れて開く事十余日、俗名六代、其木ひきヽ時花お見るによし、長じては切べし、此木高きお切れば又早く栄へ長ず、故にひききに花さくお見るため、高きお切なり、菊にも六代あり、是も長じて切べし、平氏の重盛の孫六代年長じて切れしなり、此花初開かんとする時甚美し、花衰謝する時あしヽ、実お結ぶ事希也、李惟熙曰、桃杏双仁者殺人、其花六出失其常故也、時珍雲、索麪豆粉近杏仁則煉、杏は根入最浅し、故に石おたかく根におくべし、根堅く花盛にして果お結ぶ、此事書譜等中華の書に出たり、実おうふべし、或曰桃の木に杏枝おつぐべし、杏に数種あり、実に大小あり、味に甘酸あり、