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枕草子

木の花は なしの花(○○○○)よにすさまじくあやしき物にして、めにちかくはかなき文つけなどにせず、あいきやうおくれたる人のかほなど見ては、たとひにいふもげに其いろよりしてあいなく見ゆるお、もろこしにかぎりなき物にて、文にもつくるなるお、さりともあるやうあらんとて、せめて見れば、花びらのはしにおかしきにほひこそ心もとなくつきためれ、やうきひ、みかどの御使ひにあひてなきけるかほににせて、梨花一枝春雨おおびたりなどいひたるは、おぼろけならじとおもふに、猶いみじうめでたき事はたぐひあらじとおぼえたり、