[p.0355][p.0356]
重修本草綱目啓蒙
二十一山果
菴羅果 一名王城〈事物紺珠〉 菴羅迦果〈花暦百詠〉 羅迦果〈食物本草〉 和産詳ならず、世に安蘭樹お以てこれに充るは穏ならず、安蘭樹は和州多武峯大織冠の御廟の傍に一株あり、是は鎌足公の御子定慧和尚如唐の時、鎌足公の薨去お聞玉ひ、五台山に登り、此種お採り、十三重の塔に用ゆる材木とお携て、帰朝ありて栽られしなり、宝暦癸酉の年に至まで千八十年なり、原木は山谷中にあり、今廟傍の者は榠櫨に接たるなりと雲、形状榠櫨と同じ、葉の形も異ならず、三月の末淡紅花お開く、又榠櫨と同じ、実は榠櫨より小にして香味微しく異なり、内に黒〓あり、地に下して生じ易し、亦枝お圧するも可なり、故に今花家に多し、俗に実お用て痰及隔症の薬とす、漢名詳ならず、世に安蘭の音菴羅に近き故に誤り混ずるなり、