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重修本草綱目啓蒙
二十一山果
木瓜 通名 一名鉄脚梨〈秘伝花鏡〉 真の木瓜は享保年中に渡る、木大にして一丈に過ぐ、葉の形長大にして桃葉の如し、春未だ葉お生ぜざる時花お開く、海棠ぼけに似て色鮮美、花後実お結ぶ長さ二寸余其末凹にして内に鼻あり、石榴(ざくろの)尖の如し、常のからぼけには鼻なし、からぼけはひぼけ、海棠ぼけの総名なり、花の色紅なるおひぼけと雲、即占幹海棠なり、花紅白雑り、海棠の花の如き者おかいどうぼけと雲、即木瓜の一種なり、此に雌雄あり、雄なる者は実お結ばず、雌なる者は実お結べども多からず形真の木瓜より短くして鼻なし、薬舗に舶来の木瓜あり、一寸半許の長さにして、縦に二つに切る、形状漢種と同じ、真物なり、真の木瓜と呼ぶ者は大さ八分許りなるお、厚さ二三分に横に切り乾たる者なり、此はくさぼけの実にして樝子なり、真に非ず、又二寸許の長さなる実お、竪に四つに切りて乾たるあり、是榠樝(くはりん)にして亦真に非ず、 増、古へより木瓜おぼけと訓ず、ぼけは木瓜の音転なり、本邦の俗久く坐して麻痺転筋する時ぼけぼけと呼ぶ時は、速に治すと雲ひ伝ふ、即発明に、弘景曰、木瓜最療転筋、如転筋時但呼其名、及書上作木瓜字皆愈、此理亦不可解と雲に符合す、これ木瓜にぼけの訓あるお以てなり、