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塩尻
三十三
一栂梨とて、瓜のごとく、いろ黄にして味不好菓也、〈梨の類に非ず、木瓜の一種也、〉或は是お櫨〓〈まるめる〉と雲、又花梨牟なりといふ、案ずるに、榠樝也、されば栂おとがと訓じつがと呼、又過おとがとよむ、此木の実香味不佳の故に、毒とも薬ともいふ者なく、過ちもなく、誉もなし、世俗つヽなしとは、痴にして心つきなき者おいふ也、是おまたとてなしと雲は郷談の訛也、