[p.0377]
庖厨備用倭名本草
六山果
桜桃(あうたう/にわさくら) 倭名抄ににそさくら一名朱桜、多識篇もにわざくら、考本草一名鸎桃(あうとう)、一名含桃(かんたう)、礼記に仲春天子似含桃薦宗廟即此也、其木多陰なり、百果に先て熟す、故古人多は珍貴す、其実熟する時、深紅色のものお朱桜と雲、紫色にして皮裏に細黄点あるお紫桜と雲、味最甘美なり、又正黄明なるお蝋梅と雲、小にして紅なるお桜珠と雲、味皆及ばず、極て大なるは弾丸の如し、〓細して肉厚し、猶得がたし、李時珍曰、桜桃樹甚だ高からず、春初に白花お開く、繁英にして雪の如し、其葉は団にして尖あり、細歯あり、子おむすぶこと一枝に数十顆、三月熟する時よく守るべし、しかせざれば鳥皆食してのこりなし、塩にかくして蜜に煎じて皆よし、或は蜜と同じくつきて糕にして食す、元升曰、西国民間に或はゆすらともいへり、 桜桃味甘性熱渋毒なし、中お調へ脾気おまし、顔色お美にして、洩精水穀痢おとヾむ、 食禁 多食すれば熱お発す、病ある人は食すべからず、病立どころに発す、且死するものもあり、小児多食すれば吐血して死するものもあり、古へ小児兄弟毎日多食して、長は肺痿お発し、幼は肺癰お発して相継で死たり、儒門事親に此お載たり、