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枕草子

木の花は 四月のつごもり、五月のついたちなどの比ほひ、橘のこくあおきに、花のいとしろく咲たるに、雨のふりたるつとめてなどはよになく心あるさまにおかし、花の中よりみのこがねのたまとみえて、いみじくきはやかに見えたるなど、あさ露にぬれたるさくらにもおとらず、郭公のよすがとさへ思へばにや、猶更にいふべきにもあらず、