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草木性譜

柚 処々に植、其樹刺あり、葉冬お経て凋まず、深緑色、本に小葉あり、春新条お生じ葉お発す、夏に至て葉間に五弁の白花お開く、香気あり、後果お結ぶ、初青色、冬に至り熟して黄色状大なり、又羅柚( /はなゆ)〈広東新語〉は果の状小なり、その新条お生ずる時、偶葉形整はずして白粉お伝(つ)き、病の如なるものあり、其末より漸々に虫に化し、終に葉茎お離る、状烏蜀( /いもむし)の如し、悪臭お発す、秋に至り鳳子蝶( /あげはのてふ)〈三才図会〉に化し去る、此余柑橘橙の類にも虫お生ず、又樹根竹根の土中に於て春蝉の形おなし、夏に至り終に生お得て土中より出づ、其土上に出ざるもの、頭上より蕈の如きものお生ず、蝉花〈本草綱目〉と雲ふ、凡化生の中に類お以て化するは理なり、類にあらずして化するものあり、陳麦蝶となり、竹葉渓蟹となるの類は理外なり、是皆造化の奇功、これお論じ窮べからず、