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大和本草
十二雑木
枸橘(からたちばな/からたち) 本草、一名臭橘多刺、人家多収種為藩籬、今案和名からたちと雲物なり、葉細なり、其木はり多き故、人家うへて籬とし盗に備ふ、是おじやけついばらと訓ずるは誤れり、じやけつは雲実なり、枸橘の実の形は、蜜橘の如くにして臭く酸し不可食、筑紫にてげず(○○)と雲、昔より国俗あやまりて、是お枳殻枳実として薬に用ゆ非也、世医習而不察なり、本草およく考へて其是非お知べし、真枳実枳殻年々からより多くわたる可用、日本の臭橘は不可用、枳殻も日本にありといふ、臭橘お垣根にうえて盗賊おふせぐべし、熟したる実お取、皮お去、なかご共に土中にうへ、日お掩ひ、又わらあくたお上に置べし、生じやすし、生じて後わらお去べし、上の日おほひは、先其まヽ置べし、少長する時ほりて垣にうゆるに、間五寸づヽ置てしげくうふべし、如此ならざればきびしからず、なかごお去り、〓おとりてうふれば生じがたし、