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重修本草綱目啓蒙
二十二味
呉茱萸 かははじかみ〈和名抄〉 今は通名 はぶてこぶら(○○○○○○)〈紀州若山雲州〉 はびらこぶら(○○○○○○)〈紀州熊野〉 一名九日三官〈輟耕録〉 辟邪翁〈典籍便覧〉 挿筵〈名物法言〉 呉〓〈名医類案〉 呉萸〈集験良方〉 薬茱萸〈正字通〉 典籍便覧に、凡蒲萄花椒(さんしやう)呉茱萸皆招蛇と雲時は、紀州雲州にてはぶてこぶらと呼ぶ者は非なり、はぶてこぶらは蛮国より来りて、蛇毒お解する者故なり、享保年中に漢種渡る、木の高さ丈余、枝傍にはびこり、又根傍に孽条(ひこばえ)叢生す、分ち栽ゆべし、本根お移せば枯れ易し、春新葉お生ず、形漆(うるしの)葉に似て大にして数少し厚して深緑色短毛ありて臭し、皆対生して秦皮の葉の如し、夏月枝稍ごとに花お開く数百、簇りて崖椒(いぬさんしやう)の如し、黄白色後実お結ぶ、大さ二分余、扁して五稜あり、紫赤色にして刺なし、希に黒子あり、椒目(さんしやうのたね)の如し、此木諸国に自生あり、長州防州紀州殊に多し、一種粒小なる者あり、今舶来の者粒小し、時珍の説一種粒大、一種粒小、小者入薬為勝と雲、粒大なる者は臭気甚して、湯に泡せざれば服し難し、容の説に、粒小者是呉茱萸、粒大者是食茱萸と雲ふ、或説お挙ぐるは非なり、 増、集解、桓景随費長房雲雲、五雑俎雲、九日佩茱萸登高飲菊花酒、相伝以為費長房教桓景避災之術、余按戚夫人待児賈佩蘭言在宮中、九月九日食蓬餌飲菊花酒、則漢初已有之矣、不始於桓景也、 舶来の呉茱萸は小粒なり、故に姦商真の呉茱萸中の小粒なる者お混じて售る、然れども本邦にて培育する者は子の蒂(じく)巨くして、漢産の細蒂なるに異なり、最とも弁別し易し、