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重修本草綱目啓蒙
二十四喬木
蘗木 きはだ〈木皮黄色なる故にきはだと名く〉 一名山屠〈輟耕録〉 暖木〈訓蒙字会〉 根黄〈発明附方〉 増一名黄皮〈活幼全書〉 寒国の深山に生ず、葉は呉茱萸葉に似て薄く、又漆葉に似たり、断れば臭気あり、皆両対して生ず、夏月に枝上に細黄花お開く、雌雄あり、雌なる者は実お結ぶ、形北五味子の如にして、縦に五稜あり、熟すれば色黒く味苦し、俗に四国米(しこのへい)と雲、殺虫の薬とす、蘗木皮薬舗の者は、京師えは北山より出す、享保年中朝鮮の蘗木来り官園にあり、今は大木となる、形状は和産に異ならず、隻葉色潤ひありて美し、唐山にても朝鮮の産お上とす、皮お採り薬用とす、本草原始に、川黄蘗肉厚而色黄、山黄蘗肉薄而色淡と雲り、今京師蘗舗売る所亦二品あり、木曾山中より出すお美濃皮(○○○)と称し、上品とす、是川黄蘗也、蘗用染料共に良とす、江州葛川より出す者お北山(○○)と称す、薬用染料共に下品とす、是山黄蘗なり、 増、黄蘗の実お薬用とすること諸本草に載せず、和方書に用て虫お殺し、腹痛お治し、疳疾労瘵の薬とす、これお四国米(しこのへい)と雲ふ、其形五味子に似て、黒色にして味苦し朝鮮には鷹の薬とす、鷹鶻方に、若喘急、潢蘗実槌砕裹飼と雲へり、大和本草にしこのへいは蛮語なるべしと雲は誤なり、 一種にがき(○○○)と雲あり、近山に自生多し、小木なり、全葉の形香椿(ひやんちん)に似て、一葉の形練(せんだん)葉の如し、黄色お帯て葉蒂赤し、葉苦して黄蘗の如く、葉形も相似たり、故に大和本草に、黄蘗秦皮苦木の三物は葉相似て弁じ難しと雲へり、即ち救荒本草の黄練樹なり、曰葉似初生椿樹葉而極小、又似練葉色微帯黄、開花紫赤色、結子如豌豆、大生青熟、亦紫赤也、葉味微苦と雲に能く合へり、 又大峯山のだらすけは、黄蘗粉一味お水にて煎じつめたるものなり、 檀桓(○○) きはだの木の根傍に生ずる塊にして、茯苓の如き者なり、舶来なし、和産も詳ならず、蘗木の根とする説は非なり、