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大和本草
十一薬木
椿 葉は漆の樹に似たり、樗は古来本邦に有之、椿は無之、此木近年木幡万福寺自中華来寺僧以葉加之羹上、而助香気、近年は伝へ植て処々に多し、其葉附枝、両々相対上下有葉、樗の葉の如し、葉闊さ二寸長五寸計、葉正中之筋赤、食之有香気、花なく実なし、其幹直なり、椿根皮為薬、其根より苗お多く生じて甚繁生す、長じやすくしげりやすし、数年の内大木となる、広地に多くうへて薪材とすべし、若葉おつみて湯びきてあぶり煎じて茶とし、或はほし、末して茶に点ず、香味よし、此事園史に出たり、荘子曰、上古有大椿者、以八千歳為春、八千歳為秋、此木削れば木理美し、器材とすべし、本邦古来椿おつばきとよみあやまれり、順和名抄にも、椿お誤てつばきと訓ず、つばきは山茶なり、椿にあらず、凡漆、椿、樗、塩麩木(ぬるて)、黄櫨、其葉皆相似たり、椿も人によりこれに触て小瘡お生ず漆のごとし、本草に椿樗一条にのせて不分、看之者可分別、