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草木六部耕種法
九需葉
赭黒繭(くりかはいろのまゆ)の野蚕は、上野下野越後奥州等に有り、此の髯蟖(けむし)の形状も毛多く、暗青色なるも、淡黒色なるも有り、此虫は極て漆樹葉お好むが故に、会津国にては此虫火しく滋息して、漆樹葉お喰ひ、一段や二段の漆園おば、一夜の中に其葉お喰尽して、終に其木お枯お以て、会津候これお患て、毎年夏中には度々数万の人夫お起して、其野蚕お退治せしむ、然れども此お殺尽すこと能はず、年々数多の漆樹お枯す、是故に会津の患とする所は此野蚕なり、