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重修本草綱目啓蒙
二十五灌木
冬青 もちのき(○○○○) 一名万年枝〈事物異名〉 万年樹〈群芳譜〉 万歳樹〈事物紺珠〉 万歳枝〈正字通〉 万年木 杻木 橿 土橿〈共同上〉 檍〈典籍便覧〉 冬生〈同上〉 冬牆〈女南甫史〉 長生〈〓苑詳註〉 凍生〈本草精義〉 牛筋木〈鄭樵爾雅註〉 もちには種類多し、皆赤実お結ぶ、冬青は其総名なり、蔵器の説に、其葉堪染緋と雲ふは、ふくらもちなり、ふくらもち(○○○○○)は、一名ふくらしばのき、〈土州〉ふくらんじやう、〈和州〉ふくらんじよ、ふくらそう、〈勢州〉ふくらじ、〈播州〉ふくらじよ〈泉州〉ずいご、〈同上〉さやご、〈城州大悲山〉そよご、〈尾州〉そよぎ、〈東国〉ごまいり、〈防州〉 木高さ丈余葉互生す、女貞(ねずみもち)の葉より闊して厚く光あり、横に巨皺ありて平ならず、冬お経て凋まず、夏月葉間に小白花お開くこと二三蕚、其蒂長し、後円実お結ぶ、初は緑色、熟すれば赤色にして、桜実の形の如し、一種めぶくら(○○○○)あり、一名くろき、〈城州鞍馬〉あぶらき、〈〓州〉もくさんご、〈土州〉葉は小にして赤し、紀州には大木あり、皮お剥て火把とす、故にあぶらきと呼ぶ、一種もちのき(○○○○)あり、庭際に多く栽ゆ、大木なり、大和本草になヽみのきと雲ふ、葉は狭くして、石瓜(もくこくの)葉に似て厚し、冬凋まず、女南甫史の細葉冬青なり、一種くろが子もち(○○○○○○)は、葉もちのきの葉より闊して微薄し、一種大坂もち(○○○○)は葉大なり、一種江戸もち(○○○○)は、葉大坂もちより大にして、長さ三寸許、実も亦大なり、一種とりもちのき(○○○○○○)は、くろが子もちの葉に似て色浅し、木皮お搗てとりもちお取るなり、もちは枸骨の条に粘黐と雲、当に粘黐に作るべし、鴻苞集に黐膠と雲ふ、又黐と雲、一種おほもちのき(○○○○○○)あり、葉大にして大葉楠の如し、この外に黐膠(とりもち)お取る木尚多し、 増一種とりもちのきと呼ものあり、葉の形冬青より長く、三寸余に及ぶ、葉の半より末に粗き浅鋸歯あり、葉帯の背より心脈に至て紅色お帯ぶ、葉枝頂に排生すること車輪の如し、近年此木より粘黐お取る、是他木より多しと雲、