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剪花翁伝
前編一 二月開花
嫩機樹(わかかへで) 数種、即若芽紅葉、二月中旬、方日向、地二分湿、土回塵(まひごみ)、肥大便寒中に入べし、移(うえかへ)秋彼岸後より十一月頃までよし、毛氈、縮緬、定家、山、青海(せいがい)、緑青海(あおせいがい)、いづれも芽出し至て赤く、葉満開て後青く、秋淡く照也、毛氈殊にあかし、青海は葉七弁にて、色亦深くして長くうすろがず、野村、色紫にて秋も同じ色なり、紙に摺写せば紫いとうつくし、一行寺、芽出しの時は少し赤し、開き満てば青し、秋は抜群照也、都て芽出しの枝は水上がたし、是は枝木お水に入んとおもふ程の長お鋸目お入て、汲立の水にて逆水して、水器に生置ば勢ひよく水お上る也、もし日お経るものは、切口およく焼きて、此切口お切捨、木通の末お水に和し、其中に漬置て後挿べし、