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重修本草綱目啓蒙
二十四喬木
欒華 せんだん葉のぼだいじゆのはな 木名 むくれにしのき(○○○○○○○)〈和名抄〉 せんだんの葉のぼだいじゆ(○○○○○○○○○○○○) どじやうき(○○○○○)〈丹波〉 樹一名欒木〈通雅〉 欒樹〈正字通〉 木欒樹〈救荒本草〉 ぼだいじゆ同名あり、この木は葉形練(せんだんの)葉に似て大なる故、せんだん葉のぼだいじゆと呼ぶ、漢名に菩提樹と雲者は、葉の形桑葉に似たり、別物なり、欒樹は世にもくげんじと呼て、河州道明寺の名産なり、然れどももくげんじは、木槵子の転音なれば、此木に名くるは非なり、道明寺は河内国志紀郡にあり、三十四代垂〈◯垂推誤〉古天皇の勅願にて、聖徳太子の開基と雲、其土地お土師(はじの)里と雲、土師の連八島と雲人に命じて此寺お建立せらる、この時に五部の大乗経お埋めたる上に、欒樹自然に生ずると縁起に雲り、この種お諸国の寺に栽たる者多し、今は丹波の山中に自生あり、春新葉お生ず、練葉より大にして毛あり、夏枝梢に穂おなし、枝お分て花お開く、五弁下の一方に偏より開き、半辺蓮(からくさの)花に似て大なり、黄色にして心は紅色なり、後実お結ぶ、酸漿鈴子(ほうづきのかは)に似て、微小にして扁し、秋に至り熟すれば皮自ら開き、内に二三子あり、形正円にして大さ二分余、色黒して至て堅し、穴お穿ち数殊に作る、又子お下して生じ易し、霜後葉枯れ落つ、薬には花お用ゆ、故に此には欒華と雲、