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大和本草
十果木
茘枝( /りちい) 竜眼 此二木、其小なるは根共にからよりわたることあり、茘枝は唐音りちい、其葉ほヽの木に似てまたあり、竜眼の葉はかしの葉に似てまたなし、二樹南国に宜し、北国に宜からず、中華にも嶺南の暖地にあり、其余の処無之、茘枝百果の内にて味猶すぐれたりと、張九齢茘枝賦にしるせり、大木には実百斛に至る、五六月盛に熟する時、其土人其下に燕会して賞之、極量取〓と、本草に記せり、竜眼は茘枝過て後七月熟す、一枝に五六十顆一処にあつまりみのる事蒲萄の如しと、事類合璧にしるせり、一名亜茘枝と雲茘枝につぐと也、薩摩に茘枝竜眼の木もとより山にありと雲(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、中華にも山竜眼とて野生ありと、本草にいへり、泉州境、肥州長崎等処々にありと雲、皆実お此地にうえし也、からともにうふべし、其実自然におちて生ずるお以しるべし、但実おうへて生じがたく、生じても長じがたく実のりがたし、長ぜずして枯る、土地異なれば也、本草約言竜眼功与人参並ぶといへり、茘枝は竜眼より味すぐれたれども、薬に不用、〓(さね)はまれに用ゆる事あり、竜眼は帰脾湯及心神復元湯に用ゆ其外用事まれ也、薬酒に用る事あり、薬にも果にも新渡の近きお可用、薬に用るには、からお去日にほし収おくべし、或肉お取、蜜につけ置べし、砂糖につけるも亦可也、如此すれば久しきに堪ふ、からともにおきて久しければ必かびて用不立、