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大和本草
十二花木
木槿(むくげ) むくげは、もくきんの転語なり、花の下品也といへども好花も亦あり、今世紅白単葉千葉重葉(やえ)其種類多し、有大紅千葉者、白千葉者、此二種よし、万葉歌に、朝顔朝露負咲雖雲暮陰社咲益家礼(おひてさくといへどゆふかげにこそさきまさりけれ)、此歌お以見れば、朝貌(がほ)は即槿花也、非牽牛子也明矣、牽牛子は、古今集に、けにごしとよめり、又和名抄には、牽牛おあさがほと訓ぜり、然れば木槿花おも牽牛花おも、あさがほといへるなるべし、一名にして二物なり、凡倭漢ともに一名二物多し、花も実も木芙蓉に似たり、正月に挟(さ)し、屡水おそヽげば能活す、