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重修本草綱目啓蒙
二十五〓木
木芙蓉 ふよう(○○○) きはちす(○○○○) 一名天英〈尺牘双魚〉 錦城〈名物法言〉 秋華〈花暦百詠〉 酔客〈事物紺珠〉 文官〈秘伝花鏡〉 青露葉〈証治準縄、葉名、〉 もと芙蓉は蓮花の名なり、この木の花蓮花に似たる故に、一名木蓮、因て木芙蓉と雲、略して芙蓉とも雲詩句等にて荷花と混じて分れ難し、故に後世は荷花お水芙蓉、〈事物異名〉草芙蓉〈同上〉と雲、品字揃に、古詩、芙蓉看欲酔、此木芙蓉開于江岸者、渉江采芙蓉、乃芙蓉之生池沼者、即荷花之謂也と雲人家庭院に多く栽ゆ、春宿根より数条叢生し、高さ五六尺、或丈許に至り葉互生す、大さ五七寸、五七尖ありて鋸歯あり、肥たる者は九尖となる、附方に九尖拒霜葉の字あり、七月葉間に花お開き、十月に至て止む、故に拒霜の名あり、菊花も遅く開く故に、亦この名あり、花は木槿(むくげ)花に似たり、蘂も亦相似たり、単葉千葉あり、浅紅あり、白あり、白くして端浅紅なる者あり、一枝に紅白雑り開く者あり、二色芙蓉(○○○○)と雲、単葉なる者は朝に開き夕に萎む、千葉なる者は日お経て萎まず、又一種一蕚上に七花開く者あり、和俗七面芙蓉(○○○○)と雲ふ、物理小識に四面の者の語あり、又一種朝開く時は、白色漸く紅色に変じ、夜に至て深紅色となる者あり、添色拒霜と雲ふ、嶺南の産なり、一名添色芙蓉、〈桂海虞衡志〉文官花、〈群芳譜〉弄色芙蓉、〈典籍便覧〉酔芙蓉〈秘伝花鏡〉三酔芙蓉〈潜確類書〉群芳譜に王敬美の説お引て、一日三換者曰三酔と雲へり、又広東新語に将紅曰初酔浅紅曰二酔、暮而深紅為三酔、故亦曰酒芙蓉と雲へり、時珍の説に、添色拒霜、花初開白色、次日稍紅、又明日則深紅、先後相間如数色と雲時は、花開きて三日あるなり、本草彙言には、花朝開其色白薄、暮稍紅、次日又深紅矣と雲時は、花開きて二日あるなり、桂海虞衡志、及物理小識、遵生八揃、秘伝花鏡には、皆花晨開正白、午後微紅、夜深紅と雲、凡芙蓉花は朝に開き夕に萎む者なれば、四書の説お以て優なりとすべし、冬に至れば枝葉共に枯る、此木皮お以て紙お抄くお小皮紙と雲こと、天工開物に出、又皮お採り線となし、織て網衣となし、暑月に服して汗臭なしと、物理小識秘伝花鏡に見へたり、又池塘有芙蓉、則獺不敢来と秘伝花鏡に見へたり、 増、花謝して後実お結ぶ、形木槿(むくげ)実に似たり、蒔て生じ易し、集解に不結実と雲は誤なり、