[p.0547]
倭訓栞
中編二十一比
ひのきつばき(○○○○○○) 山茶花の葉の中に柏葉おまじへたる奇品なり、寄生の品とみえたり、近江伊勢三河などにあり、雉囊抄に、弘法大師槙尾寺に在し時、檜葉おもて御手お摩清めて、そこに在ける椿の上に投繫て誓はく、我宿願遂べくんば、此葉彼木に生著べしと、檜葉忽ち生著て椿になる、今に在、是お世に柴手水(てうづ)とふいと見えたり、今しばしといふ里あり、伊勢鈴鹿郡高宮に此品多くあり、鈴鹿山中には、賢木多く生たり、安濃津に多羅葉木瓜柃梅(ひさかき)もときにも生ぜり、