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剪花翁伝
前編三五月開花
金糸(びやう)桃 花一重色黄、開花五月、梅天より半月計もあり、方半陰、地半湿、土回込、肥大便寒中に入べし、株九月中に分植べし、〓(さしき)春ひがんに枝三寸許に剪て、少し斜に挿て、即時に日覆すべし、後に指頭おもて、土の乾湿お圧て試るべし、指形の速にふかく入ものは可也、堅くして、指点なきものは既に乾ける也、此時水お澆ぐべし、後に又乾堅なる時は淡小便お灌ぐべし、寒中には大便お入べし、葉は柳に似て枝は飴色也、葉長くして丸からず、積気お治するに妙なりといへり、剪花の時は日の出るまでによし、其後は花いたむなり、升水は切口より上に鑪おかけて挿おくべし、