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重修本草綱目啓蒙
二十三香木
沈香 通名 一名遠秀卿〈輟耕録〉 悪掲嚕〈金光明経梵名〉 和産なし、広東新語に日本より出と雲は誤なり、蛮舶来の者唐山へ伝へしことなるべし、唐山にても、南方熱国ならざれば生ぜず、嶺南の地お離れ、南に瓊州あり、其内に黎と雲地あり、又黎母とも雲、其民深山中に居り、中国の人物と異にして、男女も別れ難しと雲、この地に産する沈香上品なり、其木は冬青(もちのき)の如しと雲、然れどもこの木全身皆香となるに非ず、香の木に結すること、人の癰疽お発するが如く木の病なり、故に香の結する木は、必其葉夏にても黄色おなし枯れたるが如し、其香は或は枝幹、或は根株にその木の脂一処に聚り、凝結してなる者なり、此香お至て上品とす、唐山にてこれお生結〈広東新語〉と雲、然れども此香は百に一二なしと雲、又木お伐て三四十年も捐ておきたるに香お結するあり、是お死結〈同上〉と雲、生結に次ぐ、総て木古くならざれば結せざる者なり、又木古くならず、数十年にして香お結するあり、これお速香〈同上〉と雲、