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西海紀游

沈香の事 大島に沈香の大木あり、文政壬辰の春、百姓深山に入りて木おおろす、日も既にくれしかば、木の葉おあつめて火にたく、其にほひかうだいなりしかば、夜明けて其あつめし木お見るに見なれぬ木なり、これにより殿様へ御訴へ申候処、さつまよりけんしお遣し、御吟味のところ、沈香に相違なし、段々ふかく山にわけ入り尋ねしに、何と申候事しれず、追々に注進のよし、役掛り御人よりきく、