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重修本草綱目啓蒙
二十三香木
返魂香 補遺、長崎官園に沈香と称する一樹あり、その幹周囲一尺許なるお、三尺許の処より伐り、今傍芽生長して丈許に及ぶと雲、弘化二年正月望日友人高井君お訪ひ、其所蔵の沈香葉三枚お目擊することお得たり、長さ七寸余、闊さ三寸五六分、櫟(くぬぎ)の葉に似て、前後尖りて中闊し、沈香の集解に葉似橘葉、又似椿葉と雲には合はず、而してその蒂味辛くして香気あり、丁香の味に妨仏たり、又丁香の集解に葉似櫟葉と雲に合するに似たり、然れども未だ其花実お見ず、又天保十五年蛮国より丁香樹と称する者お齎来せしに、長崎にて枯る惜むべし、これ官園の沈香と称する者と同物なるか知るべからず、