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北辺随筆

猿滑 いま世に猿すべりといふ木は、百日紅といふ、これおば猿なめりとぞいひけらし、夫木集に、猿滑、〈◯歌略〉とみゆ、しかれども、此末句、すべらかにてもとあるは、さるすべりすべらかとつヾくべき語勢とおぼゆれば、滑といふ字は、もと義おもてかきたりしお、万葉集に、常滑(とこなめ)などかけるたぐひに見て、後人さかしらに、なめりと書きあやまれるにやとおぼし、