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草木六部耕種法
十需花
磯松も甚だ珍奇なる者なり、此者は南国暖地の海岸なる岩間に自ら生ず、幹は蘇鉄の如く鱗形(うろこがた)あり、細枝お生じ、其葉は石竹に似て円く、九月下旬に至て花お開く、其形状桜の花の如くにして黄色なり、此者は〓りに移し植るときは、即ち枯る、此れお植る法は、白沙と埴土お等分に合せて、蛤蜊(あさり)の自然汁にて適宜(ほどよ)く煉り、此お鉢に盛り、其中に植え、毎日乾燥ざるやうに、蛤蜊の自然汁お澆ぎ掛るときは、半月許の間には活著(おへつく)ものなり、既に活て新葉お生(ふく)に至ては、常用の水お澆ぐも宜し、盛養水お淡薄くして澆げば、殊に能く繁栄す、且つ枝お〓にするも活ものなり、九月より能く温養して、冬は閉蔵法お行ひ、三月に至り塘(むろ)お出すべし、