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重修本草綱目啓蒙
二十一山果
柿 かき〈和名抄〉 一名赤実果〈典籍便覧〉 凌霜長者〈在田録〉 凌霜侯〈同上〉 珍椑〈事物異名〉 火柿 団花〈共に同上〉 金虬卵〈蔬菓争奇〉 赬虬卵〈名物法言〉 七奇果〈同上〉 金液漿〈事物紺珠〉 火傘〈同上〉 軟柿〈尺〓双魚〉 品類多し、和産二百余種あり(○○○○○○○○)、集解に載する所は少し、蘇容の説の紅柿はごしよがき(○○○○○)、一名こ子りがき(○○○○○)、大和がき(○○○○)、元来和州五所と雲地より出る者名産なり、故に五所がき(○○○○)とも大和がきとも雲ふ、今は地名お改て五瀬と雲、其柿形扁く大にして、四つに筋ありて四角に見ゆ、蒂も四角なり、故に一名方柿、〈事物紺珠〉方蒂柿〈女南甫史〉と雲、此柿〓少し、上品とす、黄柿はおむろがき(○○○○○)、一名すきとおり(○○○○○)、〈大坂〉大さ二寸許にして、竪に微し長く、熟すれば皮黄色にして白粉あり、京師御室の地に多し、故に名く、朱柿はちよぼがき(○○○○○)、一名ちよぼい(○○○○)、ちよつぼり(○○○○○)、形小く一寸許にして色赤し、一名火珠、〈鎮江府志〉椑柿はきざはし(○○○○)、軟棗はしなのがき(○○○○○)、即君遷子なり、其に次に本条あり、宗奭の説の著蓋柿はえんざがき(○○○○○)、一名しうたがき(○○○○○)、〈越中〉れんげがき(○○○○○)、形朱柿より大にして、蒂の処肉周りに出でヽ、円座おしきたるが如し、故にえんざがきと雲、形に円なると微長なると二種あり、円なる者は初より甘し、長き者は初澀く、熟して甘し、牛心柿はふでがき(○○○○)、一名ふでご子り(○○○○○)、おそご子り(○○○○○)、〈紀州〉長さ二寸半許、闊さ二寸弱にして、頭尖りて筆頭に似たり、是きざはしの内にて、青き時より澀味なく食ふべし、十月に出づ、蒸餅柿はひらご子り(○○○○○)、是大和がきの一種、大にして扁なる者なり、味澀き者多し、塔柿はみのがき(○○○○)、即漆柿(しぶかき)の中、形長大なる者にして、濃州の名産なり、皮お去り乾して白柿となし、蜂谷(はちや)がきと雲、蜂谷は濃州の地名なり、此柿尾洲より献上あり、又芸州よりも白柿お出す、西城(さいじやう)がきと雲、西城は備後の地名なれども、芸州より献上あり、西城がきの中、至て大なるお祇園坊(○○○)と雲、この柿は又別種にして、彼地にも少しと雲、他国にて祇園坊と呼ぶ者は、皆西城がきなり、乾柿の白粉おとり薬用とす、柿霜と雲、他粉お著て偽る者は蛀み易し、時珍の説の烘柿は、乾柿の青き者お採り、皮お去らず、稲草(わら)に包み、器に入れ置き熟するお雲、故につつみがきと呼ぶ、又酒樽中に入て熟するもあり、故にたるぬき〈勢州〉と呼ぶ、又すぼがき、〈豊後〉つとがき〈筑前〉の名あり、白柿はつるしがき、つりがき、枝がき、おしがき、即蜂谷がき、西城がきなり、一名釣柿、〈召武府志〉椑乾、〈書影〉霜柿、〈行厨集〉烏柿はふすべがき、一名あまぼし、漆柿の皮お去り、竈上につり置き黒く熟するお雲、〓柿はさわしがき、漆柿お灰汁に浸し、或は水に浸し、澀味お去たるお雲、肉柔に煉て皮〓し、十月に多し、故に京師にては十夜がきと雲、如木鼈子仁と雲は、大和がきの〓お雲、他柿の〓は長して相似ず、加楪と雲は大和がきお雲、八稜稍扁と雲は八稜柿〈群芳譜〉なり、俗名八王子がき(○○○○○)、一名八百屋がき(○○○○○)、たかのせ(○○○○)、〈播州〉やつみぞがき(○○○○○○)、〈石見〉形大和がきより小く色黄にして、竪に八稜あり、鹿心は鹿心柿なり、俗名いのきも(○○○○)一名ふでがき(○○○○)、石州人丸の社の傍にありて名産とす、牛心柿の形にして最小なり、折二銭は二銭に代へ用ゆる銭なり、三銭に代ゆるお折三と雲、猴棗はさるがき(○○○○)一名やまがき(○○○○)、即漆柿の形小にして数多く蔟り生ずる者なり、故にせんなりがき(○○○○○○)とも雲、皮お去て乾柿となすお、ころがきと呼ぶ、城州字治の名産なり、 柿糕かきづき、一名かきいりこ、〈讃州〉かつこ、〈筑前〉漆柿の熟したるお用、糯米粉お雑へ、搗て粢(もち)とするお雲、又漆柿の未熟なるにて製するは、蒸して搗くと雲、